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Zero-Error Systems社プロフィール

Zero Error Systems (ZES)は、シンガポールに拠点を置く半導体集積回路(IC)メーカーで、主に宇宙用途向けに高信頼性の製品とサービスを提供しています。

ZESの主な強みは、独自の革新的な技術ポートフォリオを基に、電力管理、コンピューティングのエラー率低減、そして市販の半導体デバイス(COTS)向けの放射線保護を実現することです。宇宙ミッションの失敗の最も一般的な理由が信頼性の高い電力管理の欠如に関連しているという課題に対して、ZES社は具体的な独自ソリューションを半導体およびシステム設計に実装しています。

ZESの技術は、超低ソフトエラー(ULSE)を実現し、システムのデータ整合性を確保します。また、低消費電力ソリューションにより、システムの動作寿命と信頼性が向上し、低遅延により処理能力が向上し、小面積により単位面積あたりの利用率が向上します。

また、宇宙産業向けには、ZESは市販の集積回路(COTS IC)に電力信頼性とデータ整合性を提供するRadiation Hardened by Design(RHBD)ソリューションを開発しています。これにより、衛星や宇宙電子機器の寿命延長、高機能化、インテリジェンス向上、電力信頼性の向上を実現しています

同社のソリューションには、設計による放射線耐性(RHBD)ライブラリセル、電力管理システム、ICデザインアドバイザリーサービスを含む信頼性テストなどもございます。お気軽にお問い合わせください。

ZESパンフレット(英語)

  

ラッチアップ検出・保護技術

Zero-error Systems社のラッチアップ検出・保護技術(LDAP)は、宇宙環境下で発生するシングルイベントラッチアップ(SEL)や微小ラッチアップ(μ-SEL)をリアルタイムに検知し、異常発生時に即座の電源遮断・再投入を行うことで、一般市販のIC(COTS)を安全に利用可能とする革新的な技術です。高感度な電流監視と超高速応答機構により、デバイスへの過電流ダメージを未然に防ぎ、システム全体の信頼性を大幅に向上させます。

LDAPの仕組みと動作原理

LDAP技術は、内部に組み込まれた専用コンパレータと制御回路によって、通常時の消費電流の約1.75倍に達する微小なラッチアップ電流も確実に検知します。異常を検知すると、約8µsという極めて短い時間で電源ラインを遮断し、ラッチアップ状態を解除するために電源を再投入します。この二段階の保護機構により、単発の大規模なSELだけでなく、微小なSELも取りこぼすことなく捕捉し、システムのテレメトリ出力によりエラー状態が即時に通知されるため、エンジニアはリアルタイムでシステム状態を監視できます。

ZES100 LDAPチップ

ZES100は、Zero-error Systems社のLDAP機能を実現する専用ICです。以下の特徴により、宇宙機搭載のCOTSデバイスのラッチアップ保護を確実に行います。

動作範囲 入力電圧 1.2~5.0V、負荷電流 1mA~500mA
応答速度 SEL検出から保護動作まで約8µs
検出感度 通常時の電流の約1.75倍に達する微小ラッチアップ電流を検知
耐環境性能 動作温度 -55℃~+125℃、総線量 TID 300 krad(Si)、重イオン耐性 LET 110 MeV-cm²/mg
パッケージ 5mm角QFN、Space Enhanced Plastic (SEP)採用

このZES100チップは、宇宙でのラッチアップ現象に対し、迅速かつ確実な電源リセットを行うことで、一般ICの放射線耐性を補完し、ミッション全体の信頼性向上に寄与します。

  

ポイントオブロード(PoL)電源技術

PoL(Point-of-Load)技術は、各サブシステムに必要な電圧を、機器の直近で変換・供給するための直流降圧コンバータソリューションです。厳しい宇宙環境下においても、高効率かつ安定した電圧供給を実現し、システムの動作信頼性を保証します。

PoLの仕組みと動作原理

PoLは、入力電圧(通常3V~5.5V)を効率的に降圧するために、同期式バックコンバータとして動作します。内蔵されたスイッチングトランジスタと高度な制御回路により、所要の出力電圧(0.8V~入力電圧-0.8V、外部設定可能)を生成し、軽負荷から最大出力3Aまで全負荷域で高い変換効率(ピークで95%以上)を維持します。さらに、電圧モード・ヒステリシス制御(VMHC)と電流モード・ヒステリシス制御(CMHC)を組み合わせた独自の制御方式により、入力や負荷変動に対して極めて安定した出力電圧を提供します。

ZES302 PoL降圧コンバータ

ZES302は、PoL電源技術を実現する専用ICで、以下の技術的特徴を備えています。

入力範囲 3V~5.5V
出力電圧 0.8V~(入力電圧-0.8V)(外部設定により調整可能)
出力電流 最大3A
高効率 軽負荷から3Aまで常に90%以上、ピークで95%以上の変換効率
保護機能 ソフトスタート、過電流保護(OCP)、パワーグッド信号
耐環境性能 動作温度 -55℃~+125℃、TID 300 krad(Si)、重イオン耐性 LET 110 MeV-cm²/mg
パッケージ 小型5mm×5mm QFN40

このZES302により、各電子回路へ必要な低電圧を、効率的かつ安定して供給でき、宇宙機全体の電源系統の信頼性を確実に支えます。

  

多重冗長投票(Voter)技術

Voter技術は、宇宙環境下でのデジタル回路の堅牢性を確保するために、三重冗長化(TMR)の実現に不可欠な多数決回路を提供します。誤動作やソフトエラーに対して、3系統の入力信号から過半数の正しい値を選出し、出力することで、システムのデータ整合性を守ります。

Voterの仕組みと動作原理

Voter回路は、各チャネルにおいて3系統の入力信号を受け取り、2つ以上の一致する値を選び出すことで、正しい論理出力を生成します。入力間に不一致が認められる場合は、エラー通知信号を出力し、上位システムが速やかに対応できるよう設計されています。この仕組みにより、放射線による一時的なビット反転などのソフトエラーを効果的に排除します。

ZES400 Voter-IC

ZES400は、1チップ内に4チャネル分の3入力多数決回路を集積した専用ICです。以下の主要な技術的特徴を有します。

入力仕様 各チャネルで3入力を受け、多数決により正しい出力を生成
動作電圧 1.8V~5.0Vの広いレンジに対応
パッケージ 5mm×5mm QFN28
低遅延設計 グリッチのない安定出力と高速投票処理を実現
耐環境性能 動作温度 -55℃~+125℃、TID 300 krad(Si)、重イオン耐性 LET 110 MeV-cm²/mg、SET耐性 83 MeV-cm²/mg
エラー検出 入力不一致時にエラー通知信号を出力

このZES400は、フライトコンピュータやデータバス、冗長化されたメモリシステムなど、システム全体のデジタル信号の整合性を保つために不可欠な要素として採用されます。

  

放射線耐性 System-on-Module (ZSoM™)

ZSoM™は、Zero-error Systems社が提供する、放射線環境下でも高い信頼性を実現する小型電子システムモジュールです。ARM Cortex-M0+を搭載したマイクロコントローラを中心に、LDAPおよびVoter技術を統合することで、従来の市販部品(COTS)を宇宙ミッションに適用可能なソリューションへと昇華させています。

ZSoM™の仕組みと統合技術

ZSoM™-M01モジュールは、以下の主要な技術要素が統合されています:

マイクロコントローラ ARM Cortex-M0+(低消費電力・高効率)
LDAP保護 内蔵のZES100チップによるラッチアップ検出・保護機能
不揮発メモリ保護 3個のFRAMをTMR構成し、ZES400による多数決投票でSEUを低減
内部メモリ保護 マイクロコントローラのSRAM/フラッシュに対する独自のEDACアルゴリズム
電源供給 単一5V入力をオンボードで3.3Vに降圧し、必要に応じてZES302 PoLと連携
開発環境 Arduino IDE対応、C/C++ベースのプログラミング環境

この統合モジュールにより、衛星搭載機器、CubeSat、通信・テレメトリシステムなど、幅広い宇宙向けアプリケーションで、迅速なプロトタイピングと高信頼性のシステム構築が可能となります。

  

放射線耐性設計(RHBD)ソリューション

Zero-error Systems社は、市販の集積回路(COTS IC)に対し、独自の放射線耐久設計(RHBD)ソリューションを提供することで、従来の製品に放射線耐性を付与し、低コストかつ高信頼なシステム構築を可能にしています。

当社のRHBDライブラリセルは、超低ソフトエラー(ULSE)を実現し、システム全体のデータ整合性を保証します。具体的には、約10 FIT(10億時間あたり約10エラー)という非常に低いエラー率を達成し、宇宙空間や厳しい地上環境で発生する放射線による論理回路の一時的な状態変化を最小限に抑えます。

さらに、RHBDセルは低消費電力、低遅延、小面積という設計上の要求を同時に満たしており、最新の商用半導体技術を活用しながら高度な放射線耐性を付加する設計手法を採用しています。これにより、長期間のミッションにおいても安定した動作が保証され、システム全体の信頼性向上に大きく寄与します。

このRHBDソリューションは、特にミッションクリティカルな宇宙システムにおいて、エラー発生を極力抑制し、システムの継続動作を確保するための最先端技術として高い評価を得ています。